REPORT

2022.02.28

【レポート】第3回座談会〜「設計デザインの経過報告」当事者だらけの舞台裏トーク

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みんなのすながわプロジェクト実行委員事務局です。

「わたしがつくるみんなの砂川」をテーマに、シロが主体となってスタートした、みんなのすながわプロジェクトに関する情報をお伝えしていきます。
「施設デザインの経過報告 当事者だらけの舞台裏トーク」をテーマに、2022年1月31日(月)第3回オンライン座談会を開催いたしました。

登壇メンバーは、実行委員長の今井浩恵、副実行委員長の望月亜希子に加え、建築家のアリイイリエアーキテクツの有井淳生さんと入江可子さん、プロジェクトマネージャーのARUPの高山泉さん、ファシリテーターの内田友紀さんです。

ファシリテーター・内田友紀(以下、内田)さん:今回はシロの新工場と、付帯施設のデザインの途中経過をお届けします。オープン一年前からデザインを公開することは普通は無いですし、完成後ではなく、途中で何を考えているかも含め、たくさんの人にこのプロジェクトを目撃して欲しいという思いをお伝えできればと。また、北海道砂川の地以外で、頑張っている設計士の方や街づくりの関係者、企業の方々などの考える材料にもなったら嬉しいです。
私たち自身も何が正解なのかわからないまま、手探りで試行錯誤しています。
アイデアやアドバイスをいただきながら、一緒に考える仲間になっていけたらと思います。

設計コンセプト&プランの紹介

建築家アリイイリエアーキテクツ・有井、入江(以下、有井・入江)有井です。入江です。よろしくお願いします。いつも夫婦漫才風になってしまいます(笑)

実行委員長・今井浩恵(以下、今井):面白い(笑)。素敵なご夫婦ですね!

入江:今回は建設のコンセプトやゴールに対して我々なりにどう解釈したかをお話したいと思います。
今井さんから「砂川を世界中の人々が集い、誰もが感動体験を持ち帰ることのできるまちにしたい」と聞いた時、華やかでスペシャルで特殊な建築を求めているのかと、自分たちとの感覚のギャップを感じた。でも10年まちづくりに取組むという大きなビジョンだからこそ、目標も大きく、数年で消費されない場づくりを根幹として、そこに深く共感して目線合わせができるようになりました。
砂川の人々が いきいきとリラックスしてまちを謳歌できたら、それこそが感動の風景なのではないかと思った。「砂川の、みんながいきいきと挑戦したくなる場所」をつくるために、3つのポイントをあげさせていただきます。

入江:砂川は札幌と旭川の間で、歩いている人もいなく、通り過ぎてしまう印象だが、シロの工場に足を踏み入れた時に、もの凄い熱気があった。スタッフに「どうして、機械化せずに手作業されているんですか?」と聞いたら、「機械だと自分の作りたいものに、すぐに反応・順応できない」と。
効率を考えたら機械化が当たり前だが、ここでは自分の作りたいものを作るために手作業をする。ちゃんとしたものづくり。
熱気ある風景をすでに、砂川の人たちは持っている。この風景を開くことができたら、とても価値があるのではないかと思ったのが設計の発端です。

入江:工場の姿だけでなく、働く人の気持ちも建築で変えていけるのでは?と思っていて、クリエイトする側の豊かな環境、尊い場を整えることが、働くことへの誇りになり、素晴らしい関係性が作れるのではないかと思った。

今井:物をつくる人たちを製造員という名前で片付けたくない。
価値のある高貴な「誇りある職人」

『酒かす化粧水』はまさしく手作業。20年キャリアのある職人が絞るとテクスチャーが違う。

何回も機械化にチャレンジしたが、あのしっとり感はでない。それは誇りに思っていいこと。
アリイイリエさんと会話をすることで、改めて私も職人の凄さを感じた

有井:工場とお客様が来る施設を組み合わせた建築はたくさんありますが、むしろ中心は工場というのがコンセプトのひとつになっています。

入江:そもそも建築がどうこうよりも、敷地西側に見えるピンネシリ山の風景の前で、人々が幸せそうにしていたら、それが一番美しい。シンプルで無駄のない、ラフな建築。工場の中でものを作るとは綺麗なだけじゃない。酒かすの搾りかすや水浸しの床。汚れた風景も家具作りも自分たちが作り込んでいける空間建築が、成長に繋がると思っています。

有井:8割は建築がたっていない敷地。完成というより、そこから始まり全体が成長・成熟していく環境を目指しています。

有井:外観は、空知地方のカラマツの間伐材を使ったグレイッシュな外壁。ほぼ無塗装で使い、木の色がシルバーグレーに変わる。成熟していくイメージが建物の外壁にも現れます。

有井:全体の配置イメージは、敷地が約20,000平米に対して、建築は3,000平米くらいで、ほぼ正方形に近いプロポーション。一年の約半分が冬という環境なので、建物自体をコンパクトにして内部の繋がりを密に活動できるイメージ。
建物の周りの黄緑部分は芝生=子どもたちが走り回ったりできる、原っぱのような空間。
緑色部分=少し背丈が高いイネ科の植物が中心。
工場右上の森林化草原=たねプロジェクトの苗木を植える森に還る場所。
西(左上)の畑=原料の一部を生産する場所。

有井:平面図グレー部分は、一連の製品の流れを示す付帯施設から、一般の方が来られるエリアに隣接。

入江:シロのものづくりの風景、熱気を市民に開いていくような根幹となる場所。

市民の居場所とものづくりの場所が一体化されるように心がけています。

有井:中央ホール内には段差があります。石狩川に近いため何年かに一度、川が氾濫する可能性を想定し、浸水しないように60cm床レベルをあげていますが、ホールの中だけはレベルを下げて、段差が席のように。少人数が集まれる場所として考えており、普段はシロのアーカイブなどを展示しています。

入江:キッズスペースは、大きなベンチと、靴を脱いであがれて、床暖房の個上がり的なスペースを想定。天井にはネットが張られていて、子どもが登ることができる予定です。

有井:ラウンジは、充てん室・包装室に面しているエリア。
18mにもなるパッケージ化の製造ラインがあり、その迫力感に呼応するように長いテーブルを配置した。勉強したり本を読んだり、飲食スペースにもなる。隅にカウンター席を設ける予定です。

内田:2022年の年末に工場を、2023年の春以降に付帯施設がオープンし、作りながら開いていく予定です。今後を見ていただけたらと思います。

 

施設デザインの舞台裏トーク
すながわプロジェクトのここが面白い

①施主?設計者?市民?ごちゃ混ぜですすむ密なプロセス

内田:出会って1年も経ちませんが、有井さんと入江さんに聞きますと、打合せの頻度が通常とは全然違うそうですね。

有井:普通は2〜3週間に1回くらい。このプロジェクトは、1週間に1、2回は必ずある。

入江:全体との統括にあわせて工場、ショップ、レストラン、ワークショップにあわせることもあり、この頻度になった。

内田:この頻度だとどういう影響があった?

入江:いい案をお客様へプレゼンするのが普通だが、まとまっていない考えを打合せの議論にのっけて、そこでみんなでブレストしてしまう。
みんなで考えている!フラットに意見を言い合えて、私たちも心地よくなった。
最初は良くない仕事の仕方かと悩んだ時期もあったのですが(笑)

内田:高山さんから見て、どんなところが意外性というか面白さでしたか?

プロジェクトマネージャー・高山泉(以下、高山)さん:決まっていないと大変ですが、裏を返すとやりがいというか面白い。「何をいつまでにやる」のが普通ですが、このプロジェクトは双方向的にやりとりしながら進めているのが特別。やろうとしていること自体が、会話を重ねていく中でブラッシュアップされて変わってきています。

今井:最近だと「木こりさん」ですね。
木こりさんを見つけたから、木を製材するところからやりたいと伝えると、みんなすべて受け入れてくれた(笑)

内田:スケジュールに沿って進めていくのがプロマネだとしたら、難しくはないですか?
高山さんが意識しているのはどういうところですか?

高山:意識はあまりしていなくて、大変とも思ってない。
木こりの話もプロジェクトとしては良い話。みんなが同じ方向を向いているし、建築家はビックリするだろうが、生産者が見えるところから木を調達するのはすごい。切る人と直接打ち合わせしたり。飛び込んでくるのは良い話なので、前向きに取り組めます。すごくありがたい。

有井:普通は、木を切る人をクライアントは探してきてくれませんから(笑)。

内田:宝探しのように、どんどん新しい人と、どんなチームワークが組めそうか考えてしまう。高山さんは面白がってみんなを主役にするやり方をしてくれる。決められた役割とかいう人が、ひとりもいないのが面白いところだと思います。

今井:誰よりも動いているね高山さん。

②いつの間にかプレイヤー。誰もが当事者のプロジェクト

内田:雪部会は、ワークショップに参加してくれた建設会社や学生のみなさんが中心になって進めてくれています。プロジェクトに関わってくれた人たちが、自分たちの言葉で、いつの間にか主導する人たちになっているというのが面白いと思います。

③勝ちパターンなんて気にしない。嘘のない、臨機応変な意思決定

内田:プロジェクトを発表した時に、いろんな方がアドバイスをしてくれたと聞いています。

今井:過去の成功事例や経験からだと思うのですが、「大人か、子どもか、図書館か、公園
か、用途をきちんと決めなさい。」ほとんどの方々はひとつに特化すべきだと教えてくれます。
私は全部あきらめたくない。あきらめずに全てやれる施設を作りたい

内田:実際の声をきいていくと、特化した場所を求めてはいませんでした。
ひとつの場所がほしい訳ではなく、いろんな自分がいられる場所が欲しい。
自分が居づらかったり、誰かが来づらい場所は望んでいない。という言葉をもらいました。

今井:たくさんのみなさんの声を聞いた中からの真実で、新しい勝ちパターンを作りたいと思っています。

内田:このプロジェクトは、プロセスも臨機応変で必要と思ったら即座にワークショップを開催する軽快さがあります。公共プロジェクトは公平性と平等性が第一で、みんなのすながわプロジェクトは関わっている一人ひとりを巻き込んでいきます

設計プロセス3つのピンチ

有井:SHIROの製品である香水も、アルコールの濃度が60%以上であると危険物に該当します。「危険物製造所」という、全国的にも1%しかない特殊な施設。全体を工場にすると、危険物製造所をどう作るかという法律的問題があった。とにかく危険だから人を近寄らせてはいけないということで、頭が真っ白に。調べていくうちに、全てが危険物ではないので、危険物を扱うエリアを厳密に分けて、耐火構造の壁で安全に区画することで解決した。消防とも何度も協議して付帯施設と一緒に作ることになりました。

入江:全てから距離をとらなければいけない施設だと判明してから乗り越えるのに1~2ヶ月かかった。全国的にも前例がなさすぎて、消防も対応が難しく、何回もやり取りする中でやっと成立させました。

今井:法には逆らいたくなかったので、なかば半分しょうがないと諦めていたが、3人が絶対諦めずに勝ち取ってくれましたよね。取引先の香料会社さんの協力も助かった。

有井:当初は、工場と付帯施設が接している面が少なく、ホールの部分から全部を見せることが出来ないという問題がありました。工場の周りを回って見れるような見学通路を提案したが、今井さんから「これって普通の見学通路じゃん」と2021年10月にいわれた。

入江:すごく凹みましたが、この時に言ってもらえて良かったと。毎週打合せをしすぎて合意を得て進めていると思い込み、スケジュールもタイトだったので苦しかったが、逆に私た
ちが作りたかった見学通路はこれなのかと、一番大切な工場の風景に悩んでいたが、ここで切り替えられた。

有井:左側の案で進めていたが、変えるなら今しかないと、ホール自体が見学通路となる案ができた。

今井:クライアントに言われてやったのではなく、設計士が自ら、施設にとって何が一番いいかを我がものとして考えてくれたからこそ、このタイミングで見学通路を失くすことが出来た。これがアリイイリエさんにお願いした理由。ぜったいに諦めないで最後までやるというのが見えた。半年分の卓袱台を引っ繰り返した。

入江:当初は、多目的ホール的な感じの空間を雑に想像していた。まちに賑わいを感じられなかったことから、単純に人が集まったら良いと考えた。だが、ワークショップでの声を聞いてみると、ひとりでいられる場所がほしいとか、子どもも大人も、ひとりでも大人数でも、気分によって場所を求めてるのがわかった。なので場所を選べるようなホール設計に変更した。
人の意見は聞いてみないとわからないです。耳をかたむけることが大事。

今井:地域特性もありますよね。ひとりになれるカフェがないとか。車しか居場所がないとか

内田:
砂川のみなさんも率直に語ってくれましたよね。それぞれのライフステージに合わせて、どんな気持ちだったとか、どんな時に誰と一緒にいたいとか。大学生も年配の方も、お互いの心境を語り合うこと自体も特別でした。

4.質問座談会

Q、サスティナビリティという面で、空間設計で工夫されている点はありますか?

入江:作りこみすぎずに、地元の方々が手を加えながら持続可能な範囲で育てていけることを目標としています。計画中なのですが、家具や建築のサインとかをワークショップで作るとか、竣工後もみんなが関わっていける場所にするのがサステナポイントかと思っています。

内田:他にも空間設計だけでなく、エネルギー循環や外の畑なども含めて、施設とまちとの関係全体でサスティナビリティについて考えています。

Q、江陽小学校の門柱は、残す予定ですか?何かの形で残して貰いたいです。

今井:門柱は残します。

Q、どうやって設計者を選んだんですか?

高山:錚々たる建築家さんにプレゼンいただいたけど、予定より1週間くらい早く決まりましたよね。

今井:満場一致でした。奇をてらってないところが良かったです。

当たり前のことを当たり前にやるということを一番にぶつけてきたのが、このふたりでした。「こういうリスクがあります」とかを言えるのは人間性だと思います。

高山:若手の建築家は、ともすれば変わったことを提案しがちなのですが、ちゃんと本質を考えている。

有井・入江:一回目の印象が悪かったですよね?ダメかと思ったけど偽りのないことを言おうと思った。気に入って貰おうとすることを一切やめて、背水の陣でした(笑)

内田:高山さんが「ぼくはこうなるとわかってました。みなさんならいけると思っていました。」と言ってましたね(笑)

Q、すながわの10年後のイメージをおきかせください。

今井:世界中から人が集まってくるまちになっていると思います。
シロの頑張りもありますし、ここにいるみなさんと継続的にやっていくことですね。

望月:きっと空気が変わってるかも、市民の気持ちも変わっているかも。
「砂川なんて…」と言っていたのが「砂川だもんね」という感じの誇りになってます。

内田:ひとつひとつの積み重ねで、1年でこれだけの人がこの状況を見に来てくれているのは奇跡だと思います。10年後はやばいですね。

Q、お金との距離感をどう捉えられていますか?事業の収支も関係者の生計も、10年の時間軸、かつまちづくりの規模感で帳尻合わせて行くイメージなのかなと。

今井:このプロジェクトは、お金ありきでは動いてないです。この枠で納めようとか、これが予算ですという考え方は一切ありません。「このお金はどこからくるの?」となりますが、どうにかするんです。絶対にみんなが喜んでくれる施設なので。

内田:経済的価値以外の、たくさんの価値を見出していますよね。

今井:今この段階で判断をしてはいけない。目で見てわからない、自分たちが全く気が付かない反応が起こることで価値が出てくる。それをお金に換算すると、全くもって安いものだし、今こうしていることも価値のあることだと思っています。

次回、座談会は、4月19日を予定しております。
お申し込みはデジタルチケットサイト「PassMarket」へ


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公式YouTube 第3回座談会